お問い合わせ窓口:明日香村役場
令和6年明日香村議会第1回定例会において、令和6年度の当初予算、並びに諸議案をご審議頂くにあたり、村政運営に関する基本的な考え方と新年度における施策の大綱を申し上げ、議員各位、並びに、村民の皆様のご理解とご協力をお願いするものであります。
さて今世界では、地球温暖化による大雨・暴風などの異常気象、そして、4年間続いたコロナ感染症の猛威など、人類の存続に影響を与えかねない自然現象が続発しています。加えて、この数年、ウクライナやガザ地区への侵攻など、紛争が激化しており、その結果、世界中で資材不足や価格高騰などを引き起こしています。
国内では、バブル崩壊以降、世界でも類を見ないペースで少子高齢化・労働力人口の減少が起こっており、経済面においても、長期にわたり低成長時代が続いてきました。しかし、近年、為替の円安や、消費者物価の高騰が起こってきており、その上、昨年は猛暑・異常気象、そして、今年の元旦には能登半島地震が勃発し、未だに多くの方々が避難生活を余儀なくされておられます。また、先日2月25日には日経平均株価が突然史上最高値を更新しました。世界中、そして日本国内も、先行きの見えない日々が続いています。
このような状況の中、政府は、「一億総活躍社会/抜本的な働き方改革の推進」「デフレからの完全脱却/成長と分配の好循環」「異次元のこども・子育て支援/こども未来戦略方針」「観光立国の推進/インバウンド・高付加価値化」、更に「自治体DXの推進/デジタル行財政改革」など、次々と新たな政策を打ち出してきています。
政府の進める令和6年度一般会計当初予算案の総額は112兆5,717億円で、前年に比べ1兆8,095億円の減額となっていますが、今後の政府の政策展開によっては、自主財源に乏しい明日香村の財政運営にも大きな影響を受けることが考えられることから、その動向を注意しながら機動的な村政運営に努めてまいります。
また、本村では、今年1月31日現在、人口 5,150人、高齢化率41.1%となっており、特に、未来の村の担い手づくりである「あすかっこ子育てプロジェクト」や、後期高齢者となりつつある団塊の世代を意識した「トータルケアステーションの検討」、及び、村の農村景観を維持するための「農業の担い手の確保」、並びに、地域の元気づくりの基礎となる「飛鳥・藤原の世界文化遺産登録」や「明日香まるごと博物館づくり」などの取り組みを加速化していくことが必要となっています。この他、定住人口の確保、空き家対策、耕作放棄地対策、公共施設のファシリティマネジメントなど、山積みされている喫緊の課題に全力で取り組むことが必要です。加えて、令和7年度の関西・大阪万博開催や令和8年度を目指す世界遺産登録と時をあわせて、今年、飛鳥駅前に大規模小売店舗の開業が予定されており、来年・再来年には、祝戸・飛鳥・地ノ窪地区などで、民間の宿泊施設等の開業等も予定されているため、村もこれらと連携して、地域活性化への取組を進めることが必要と考えています。
令和6年度の村政運営にあたっては、「第5次明日香村総合計画」に掲げた将来像「いつまでも住み続けたい そう思える夢ある村」「五感で体感できる明日香まるごと博物館」に向けて、取り組みを進めるとともに、第5次の明日香村総合計画及び整備計画が中間年度を迎えることから、令和7年度からの5年間の総合戦略や人口ビジョンの策定と整備計画の見直しを行っていきます。
それでは、令和6年度当初予算案の概要について、ご説明いたします。一般会計の予算総額は47億400万円で、前年度と比べると、土木費では、駅前広場の機能強化や通学路の危険箇所対策などにより、1億637万円、39.7%の増、民生費では、物価高騰に伴う低所得世帯応援給付金事業の実施などにより、1億185万円、18.3%の増などとなっており、一般会計全体では3億3,500万円、7.7%の増となっております。一般会計と7特別会計、水道事業会計、下水道事業会計の合計10会計を合算すると、72億1,473万円となり、前年度と比べると1億9,090万円、2.7%の増となっております。
それでは、総合計画の5つのテーマに従い、各種施策を説明させていただきます。
第1は「特色ある歴史的環境で次代を担う子どもが育つ村」です。
はじめに、子育て支援についてです。幼稚園において、新たに夏休み等の長期休業日において預かり保育を行い、希望する保護者が安心して預けられる環境を提供してまいります。また、幼稚園で開設している“みらいっこルーム"では、子どものすこやかな成長と保護者のリフレッシュを促進するため、様々なイベント等を継続しつつ、子育てに関する学びの場の充実を図ってまいります。さらに、子育て世代の経済的な負担を軽減するため、児童手当を高校生まで支給の延長をおこなう等の抜本的拡充を行うほか、令和6年度は国の物価高騰対応臨時交付金を活用して、保育所、幼稚園、小・中学校の給食費の無償化を行ってまいります。
一方、少子化対策の1つとして、不妊治療に対する助成金の増額など経済的な支援を実施してまいります。また、地域や社会全体で子育てを支え、安心して教育・保育を受けられるよう「子ども・子育て支援計画」を策定してまいります。
教育においては、引き続き、少人数学級編成等によるきめ細かな授業により、学力の向上と自立した感性豊かな子どもたちの育成を図るとともに、「明日香の風」や「日韓のかけ橋」など、外国文化に触れる機会を通じて、幅広い視野をもったグローバルな人材を育成してまいります。
施設等の整備については、地球温暖化をふまえて、児童・生徒の熱中症対策を目指すとともに、災害時の避難所の環境改善に資するため、学校の屋内運動場に空調設備を整備するための調査・設計等を行うとともに、安全安心な学校給食を提供するため、給食配送車等の更新を行ってまいります。
また、図書室については、いつでも必要な情報を得ることができる「知の拠点」、並びに、人や情報の交流を生み出す「交流拠点」として、村民の皆様方に親しまれるよう、5月に健康福祉センター内に図書室を移設します。
第2に「万葉の地で元気にいきいきと暮らせる村」です。
はじめに、健康・医療についてです。奈良県立医科大学と連携し、特定健診に特化した「あすか健康プロジェクト事業」と「健康ステーション事業」を積極的に連動させるとともに、農と連携した減塩運動を実施するなど、壮年期から高齢期までの連続性のある健康づくりを展開してまいります。また、健診回数の増加やがん検診費用の無償化の拡充、がん予防推進員の募集など、健診未受診者への受診勧奨等を強化し、より一層予防対策を推進してまいります。また、子ども医療費助成については、病院等の窓口での支払額を低減して、子育て世帯を支援してまいります。
次に、介護予防支援については、地域包括支援センターを中心に、社会福祉協議会や関係団体と連携し、リハビリに関わる専門職種が「ふれあいサロン」に参加するなど、フレイル予防などの促進を図ってまいります。また、独居高齢者等に緊急通報装置の普及を促し、要介護の重度化予防や孤独死の抑制を図るとともに、認知症対策としては、早期対応と適切な治療に繋げ、認知症への理解を深めながら、地域団体や介護・医療に関わる事業所等との見守りネットワークの構築を図ってまいります。
高齢者など交通弱者に対して、赤かめ周遊バスが利用しやすいよう優待乗車証を発行するとともに、社会福祉協議会と連携し、付き添い型の買い物支援を引き続き実施いたします。
障害者福祉については、障害のある人の意思を尊重し、当事者や家族、支援団体のニーズに即した各種福祉サービスの提供を行うとともに、保健・医療などの関係機関と連携した支援体制の確保に努めてまいります。
来年、2025年に団塊の世代全員が後期高齢者を迎えるにあたり、高齢者を取り巻く将来の環境を見据え、「日常生活や社会活動」を効果的に支援するための体制とその拠点となるトータルケアステーションのあり方等について計画を策定してまいります。
第3に「古都にふさわしい安全・安心で生活しやすい村」です。
はじめに旧庁舎については、周辺エリアの活性化も含めた検討を進めつつ、庁舎の一部解体を行っていきます。その他の公共施設についても新たな利活用の検討を進めていきます。
また、国の進めるデジタル化の推進に向けて、奈良県主導システムとの連携・調整や、村職員研修の実施、国の自治体標準システムの標準化ならびに住民サービス向上を目的に分析を行っていきます。さらに、コンビニ交付事業では、令和3年2月以降、住民票及び印鑑登録証明書が取得可能でありますが、利用者も増加している中で、税証明の発行についても追加導入を図り、休日や夜間、遠隔地でも取得できるようサービスの拡充を行ってまいります。
防災対策については、災害に強い村づくりのため、防災訓練等を通じて自助・共助の意識向上を図るとともに、自主防災組織の活性化や必要な資機材の整備を支援してまいります。
定住促進については、子育て世帯に向けて住宅新築された際の負担軽減のための助成金継続や、移住促進サイトによる空き家バンク制度の情報発信、並びに土地所有者とともに阪合地区の市街化区域における住宅地形成検討などにより、若者、子育て世帯の定住人口の確保を図っていきます。
公共交通については、赤かめ周遊バスをはじめとする路線バスの確保、及び、全村民が利用できるデマンド型乗合タクシーの運行を行い、誰もが身近に利用できる公共交通を目指して取組を進めてまいります。また、観光来訪者の公共交通への利用転換や狭い道路への車のアクセスを抑制するため、グリーンスローモビリティの導入実験を行い、村民と観光客が共に幸せになることができる移動手段の運用を検討していきます。
ごみ処理については、引き続き、橿原市に可燃ごみの焼却処理を委託し、適正処理に努めるとともに、その他のごみの減量化、資源化も促進してまいります。また、地震や豪雨などの大規模災害の発生に備え、災害廃棄物処理対策の基本事項や処分体制について検討し、被災時に迅速かつ適正に処理するための計画を策定します。
し尿処理についても橿原市に委託し、引き続き適正処理に努めてまいります。
次に、下水道事業については、計画的かつ効果的な調査・修繕等を行うため、昨年度までにマンホール蓋の調査及びマンホールポンプ施設の修繕・改築計画の策定を行いました。今年度については、マンホールポンプ施設の修繕・改築設計及び昨年度に引き続きマンホール蓋の調査を行ってまいります。
水道事業については、安全で安定した給水を行うため、老朽管の更新事業を行ってまいります。また、持続可能な広域水道経営を目指す「県域水道一体化」については、令和5年度中に法定協議会に移行し、令和7年度からの事業統合の実施にむけ、引き続き前向きに協議を進めてまいります。
今、浸水被害が起こっている岡寺参道周辺及び飛鳥駅前広場において、地域の核となる未来像を描きながら、村民の生命や財産を災害から守るため、現地の交通調査や浸水対策を実施します。加えて、県が実施する県営の急傾斜地崩壊対策事業を稲渕地区や細川地区で進めてまいります。
国道169号の交差点改良、県道多武峰・見瀬線の島庄地区、並びに主要地方道桜井明日香吉野線の石舞台地区の狭隘部のバイパス整備については、引き続き、県に働きかけを行い、早期完成を目指してまいります。また、既存の集落内の道路については、地元の要望などを踏まえ、緊急度や利用状況などを勘案しながら、自然色舗装などの周辺景観に配慮した整備を順次行い、利用者がより安全・安心・快適に通行できるよう努めてまいります。幹線道路や橋梁については、継続的な定期点検を行い、長寿命化を図るため、計画的に改修や修繕等を行ってまいります。
第4に「古代史の舞台で交流を促し元気のある村」です。
はじめに、農業の振興についてです。「農地を守る」という観点から、地域振興公社が主体となり、耕作放棄地の未然防止や農作業受託による高齢農家支援等を行い、耕作放棄地の増加に歯止めをかけ、世界遺産にふさわしい農村景観の維持に努めてまいります。また、新たな「農」の担い手として、企業などの多様な参画を促進していくことで、担い手不足解消に努めてまいります。
次に、「農業者を育てる」の観点からは、「地域計画」の策定を通じて大字との協議・検討を重ねていき、集落ごとの将来ビジョンを検討するとともに、地域農業の継続や新規就農者に対する支援、スマート農業の必要性などの検証を行ってまいります。
さらに、「農業で稼ぐ」の観点から、お米を中心とした農産物のブランド化、市場ニーズを捉えた新規農産物や特産品開発を行い、単価向上による農業生産額の向上を目指してまいります。
村全体の課題となりつつある有害獣対策については、猟友会と連携し、減数対策としての捕獲を続けるとともに、捕獲檻の増強や人材確保による駆除の強化も図ってまいります。また、集落診断事業により、地域の防御力向上を図るとともに、有害獣の"すみか"となる荒廃した林縁部や荒廃農地において、企業との連携による空間活用型の新たな里山ビジネス等を目指してまいります。
商工業の振興については、明日香村商工会の取り組みへの継続支援、また、民間によるクラウドファンディング活用に対する支援を実施し、新規創業や事業継承等の支援に取り組んでまいります。
観光振興については、五感で体感できる「明日香まるごと博物館」の実現に向けて、インバウンド市場への対応も含めて、飛鳥観光協会を中心とした村内組織との連携により推進してまいります。また、コロナ禍にあっても、着実に積み上げてきた旅行商品の販売促進のためのプロモーション、インスタグラムによる情報発信やプロガイドの育成強化、御朱印企画等を継続して実施してまいります。
さらに、「飛鳥・藤原」の世界文化遺産登録や関西万博を契機と捉えて、住民協働型のイベント「街ガチャ」や村内事業者のデジタル情報強化を行ってまいります。併せて、多様な主体と連携して、冬・夏の閑散期の底上げを目指したキャンペーンを行い、観光シーズンの平準化や新たな客層の誘客促進を目指してまいります。
また、3月10日の第3回に引き続き、第4回飛鳥ハーフマラソンを開催し、スポーツを切り口とした新たな観光客層の開拓、地域経済の活性化、村民の健康意識の向上をめざすとともに、世界遺産登録推進と連動し、国内外に広く情報発信を行い、新たな明日香ファンの獲得に努めてまいります。
第5に「世界遺産登録による歴史的風土を守り活かし新たな文化をつくり出す村」です。
令和8年の『飛鳥・藤原』の世界文化遺産登録を目指し、現在、国内推薦を得るため、協議会メンバーと協力し取組を進めてまいります。また、世界遺産登録に向けた応援活動の募集や講演会の実施など機運醸成に向けた取組や、大学連携によりVRコンテンツを活用した構成資産の見える化、並びに、県に対し飛鳥宮跡及び飛鳥京跡苑池の整備に向けた要望などを行っています。あわせて、飛鳥宮跡周辺地区や飛鳥寺周辺地区のにぎわいを創出するため、官民連携によるエリアプラットフォームの構築を図っていきます。
さらに、高松塚古墳周辺地区においては、史跡整備や園路整備の促進に努めるとともに、アサガオプロジェクトなどを行っている牽牛子塚古墳についても、来訪者に歴史的文化的資源の魅力を伝えながら、さらなる文化観光の推進に繋げ、農業振興施設「アグリステーション飛鳥」と連動した周辺の観光施設や地域資源とのネットワーク化を図り、西明日香地域の周遊環境を整えるための取組を進めてまいります。
学術・文化の分野については、「明日香の匠展」を開催するとともに、「飛鳥アートビレッジ」や“伎楽"を再現する研究を進めるなど、新たな文化の創造と魅力の発信に努めてまいります。また、公民館活動等を展開している各種団体やサークルとともに、次世代を担う子どもたちによる芸能発表を実施するなど、来訪者も含めて多世代にわたる交流ができる“文化が香る村づくり"を展開してまいります。
これらの取組による村づくりを行うためにも、「明日香座」などにより村民の皆様の提案を受けるとともに、大学や企業、そして村に関心を持って活動していただける方々と積極的に連携を行ってまいります。
以上、令和6年度の村政運営に関する基本的な考え方と、新年度における施策の大綱を申し上げました。本方針に基づき、提案させて頂いた令和6年度予算案をはじめ、各議案につきまして、ご審議の程よろしくお願いいたします。
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