明日香村

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平成30年度 施政方針

 平成30年明日香村議会第1回定例会において、平成30年度の予算、並びに諸議案をご審議頂くにあたり、村政運営に関する基本的な考え方と新年度における施策の大綱を申し上げ、議員各位及び村民の皆様方のご理解とご協力をお願いするものであります。
さて、現在、北朝鮮情勢などの国際関係は緊迫しているものの、IoTやAIの進化、国際観光の拡大などにより、世界の産業構造は大きく変革しています。その中で欧米を中心に雇用や消費は改善しており、中国の成長鈍化が下押し要因となるものの、世界経済は総じて堅調を維持すると予測されています。
国内においても、2020年の東京オリンピック開催に伴う建設投資や消費の増加に加え、中長期的なインバウンド(外国人観光客)の増加が期待されています。このようなプラス要因が目立つ一方、少子高齢化が加速するとともに、待機児童問題や介護・医療・社会保障などの課題が深刻化し、現役世代の先行き不安感が根強く存在しています。こういった課題を打破するために、国は「一億総活躍社会」の実現を掲げ、「人生100年時代構想」や「働き方改革」の実現などの、様々な政策を展開しています。地方部では、地域自らが主体となって、直面する様々な課題を解決するとともに、地域資源を活用し、地域をいかに再生していくのかという地方創生が強く求められているところです。
そのような中、国の平成30年度一般会計予算案の総額は97兆7,128億円で、前年度に比べ、2,581億円の増額となっており、5年連続で過去最大を更新しました。しかし、国債発行額の残高は平成29年度末で865兆円となる見込みで、今後の国の歳出改革の取り組み如何では、村の財政運営に大きな影響を及ぼすと懸念されます。
さて、本村においては、今年2月28日現在、人口は5,621人、高齢化比率は37.4%となっており、若年層の村外流出、空き家や耕作放棄地の増大など、従来から懸念されてきた課題が継続しています。そして平成2年から平成27年の人口減少率が25%に達していることから、昨年春の過疎法の改正に伴い、明日香村が過疎地域に追加指定されました。
本村としては、平成32年度から始まる第5次明日香村整備計画を見据え、現在の第4次明日香村整備計画を着実に推進するとともに、「明日香まるごと博物館づくり」を押し進め、併せて、一昨年2月に策定した明日香村人口ビジョン・総合戦略に基づき、「暮らしたくなる村づくり」「働きたくなる村づくり」「魅力を磨きつづける」を目標に、統合的に各分野の施策展開を図ってまいります。
平成30年度の予算編成においては、(1)新庁舎建設の事業化、(2)産業集積ゾーンでの宿泊施設等の誘致、(3)牽牛子塚古墳等の復元整備、(4)駅前広場の整備・運営など、未来の村づくりに関わる主要なプロジェクトを着実に実現していくとともに、効果効率的な事業推進を心がけることで、引き続き規律ある財政運営を堅持し、将来負担の軽減を図ってまいりたいと考えています。
平成30年度当初予算案の概要については、一般会計の予算総額は、40億2,000万円で、前年度と比べると新庁舎建設事業を中心に総務費で1億1,713万円、15.5%の増、役場庁舎建設基金積立金を中心に諸支出金で8,736万円、16.0%の増となっており、一般会計全体で2億4,100万円、6.4%増となります。一般会計と8特別会計並びに水道事業会計の合計10会計を合算すると、63億9,084万円となり、前年度と比べると1億6,107万円、2.6%増となっています。

 

 それではまず、主要なプロジェクトから説明させていただきます。
新庁舎建設については、昨年7月の村議会において新庁舎建設特別委員会を設置いただき、建設に向けて本格的な議論を始めていただきました。平成30年度は、前年度に引き続き、市街化調整区域での立地を進めるための地区計画策定や用地取得に係る土地収用法の事業認定作業等を進めるとともに、新庁舎建設の基本設計を行い、新庁舎の事業発注に向けた準備を行ってまいります。
産業集積ゾーンでの宿泊施設等の誘致については、星野リゾートとの「企業立地に関するパートナーシップ協定」に基づき、真弓地区における宿泊施設の誘致に伴う地元対応を図り、併せてその実現に向けて、上下水道の整備等の取り組みを進めてまいります。
牽牛子塚古墳等の復元整備については、牽牛子塚古墳と隣接する越塚御門古墳の一体的な保存と活用に向け、歴史的風土にふさわしく、体感できる復元整備を実施してまいります。さらに西飛鳥周遊の拠点となるよう、観光施策での位置づけをより明確化してまいります。
駅前広場の整備・運営については、体験型の個人観光が拡大し、インバウンドの増加が想定される中で、飛鳥観光のゲートウェイである飛鳥駅前の総合案内所を改修し、誘致から受入までワンストップで対応できる窓口を設置するとともに、古都飛鳥保存財団や飛鳥京観光協会と連携して観光情報の発信等を一括して対応できるよう体制の強化に努めてまいります。

 次にその他の施策について、5つのテーマに分けて説明させていただきます。


第1は「明日香村第4次整備計画事業の推進」です。
平成32年度から10年間の次期整備計画を国土交通省による社会資本整備審議会明日香村小委員会において議論し、県に策定していただくことに加え、高松塚古墳壁画の保存・公開施設の事業化や村の活性化に必要な土地利用の規制緩和を、国・県・「飛鳥議連」等に働きかけてまいります。併せて、村づくりの基本的な方向性を示すため、明日香村総合計画を策定し、国等への働きかけの土台といたします。
まず道路整備については、県道多武峰・見瀬線の道路改良事業、県道橿原神宮東口停車場・飛鳥線の電線類地中化事業、及び村道地ノ窪線の道路改良事業の早期完成を目指してまいります。また、生活道路につきましては、地元要望を踏まえ、緊急性、重要性を考慮し、安全・安心かつ歴史的風土や周辺景観と調和した整備に努めてまいります。
次に、上水道事業については、安定した水道の給水確保を図るため、老朽管の耐震更新を計画的に進めてまいります。また、水道事業運営を安定的に継続するため、県域水道一体化による効率化について検討してまいります。
下水道事業については、引き続き水洗化率の向上のための啓発に努めるとともに、経営情報、資産状況の把握による経営基盤の強化及び財政マネジメント向上のため、平成31年度の公営企業会計移行を目指し、準備を進めてまいります。


 第2に「暮らしたくなる村づくり」です。
はじめに、公共交通については、平成30年度も引き続き村民・観光客への利用促進策を講じながら、持続可能な公共交通体系を構築してまいります。
幹線道路や橋りょうについては、年次計画により点検・修繕を実施し、長寿命化を図るとともに、走行環境の安全性を確保してまいります。
また、防犯力の向上を図るため、自主防犯組織の活動を支援し、防犯カメラや防犯灯の設置など、安全で安心な地域社会の実現を図ってまいります。
さらに、台風や局地的豪雨など、従来想定していなかったような自然災害が発生していることから、地域の実情に見合った防災・減災対策や自助・共助の重要性に関する意識を高める防災訓練を実施してまいります。加えて、非常時に備え、備蓄品等の充実・強化、並びに自主防災組織率の向上に取り組んでまいります。
次に国民健康保険制度については、国民健康保険法の改正より、平成30年度から都道府県が市町村とともに国保の運営を担い、安定的な財政運営や効率的な事業の確保に向けて中心的な役割を担うこととなりました。本村においても、県単位化に適切に対応し、奈良県との連携を密にしながら、保険給付の適正実施に努めるとともに、事務の標準化や共同化を推進してまいります。なお、国民健康保険税の改正によりまして、必要となる保険事業費納付金に対応するとともに制度改正前における収支不足(赤字)額の計画的な解消に努めてまいります。
次に、教育・子育てについてです。
教育においては、小規模校のメリットを活かし、幼小中の接続・連携をさらに強化し、12年間を見通した明日香ならではの幼小中一貫教育、英語教育や郷土学習のさらなる充実、少人数学級編成による少人数授業の展開など、一人ひとりへのきめ細かな指導により、学力の向上と自立した感性豊かな子どもたちの育成を図ってまいります。また、小学校の空調整備について、国の平成29年度補正予算における国庫補助金を活用し、実行してまいります。さらに給食センターの受電設備やボイラーの更新など、安心・安全な給食の提供を図るため、老朽化した設備の改修を実施いたします。
子育て支援策では、安心して子どもを産み、健やかに育てることができるよう、子育て世代包括支援センターでの子育て総合相談窓口を充実し、妊娠前から子育て期までの様々なニーズに対して、総合的な支援を提供しながら、母子の健康管理や虐待防止等にも支援してまいります。さらに、子育て世代等が子育てアプリに登録して会員となり、子育てに必要な知識や子育て教室・交流会などのタイムリーな情報等、子育てに役立つ情報が手軽に入手できる環境を整備し、子育てに対する不安の軽減を図ってまいります。また、子育て世代の経済的な負担を軽減するため、不妊治療助成や妊産婦健診助成、多子世帯にかかる保幼小中の給食費負担軽減、幼稚園保育料等の軽減、出産お祝金や小学校・中学校への新入学児童・生徒へのお祝金の支給を引き続き実施いたします。また、子育て家庭が安心して子どもを預け働くことができるよう、引き続き放課後児童クラブの運営に努めてまいります。
健康・福祉については、健康寿命を延ばし、がんや循環器疾患による死亡率を改善させるため、生活習慣病の発症予防と重症化予防を図り、乳幼児期から高齢期まで生涯を通した健康づくりに取り組んでまいります。
まず、健康ステーション事業を継続実施し、食生活の改善や運動習慣の取得、並びに筋肉量・筋力が低下してきた方に対して早期の運動プログラムを提供するフレイル予防教室を大字等のサロン活動で実施しながら、健康づくりの支援環境を整え、多世代にわたる健康意識の向上に繋げてまいります。
次に、高齢者福祉についてです。少子高齢化の進展や家庭・地域における繋がりの希薄化などの社会情勢の変化に対応し、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を送るため、医療・健康づくりと介護・介護予防の分野を連携させて、地域包括ケアシステムの推進体制の強化を図ってまいります。まず、地域包括支援センターを中心に医師や介護保険サービス事業所、地域福祉団体等が参加して、介護等の問題について検討し、村全体の課題として協議する「地域ケア会議」を開催いたします。一方、病院と地域医療・介護の関係者間で退院後も安心して在宅介護へと移行できるよう、環境を整えてまいります。
また、社会福祉協議会等と連携し、集いの場を拡大し、見守りや安否確認、外出支援などの日常生活の支援活動を行い、地域で支え合う環境を整備してまいります。
なお、第7期の介護保険事業に要する費用の総額を賄うため、介護保険料を改定するなど、村の介護保険制度の安定的運用に努めてまいります。
障害者福祉については、障害のある人もない人も、ともに安心して暮らせる社会の実現を目指して、一人ひとりのニーズに応じた各種福祉サービス提供体制の充実を図るとともに、保健・医療・福祉関係者や保育・教育等の関係機関が連携し、その支援体制を図るための協議の場を確保してまいります。


 第3に「働きたくなる村づくり」です。
はじめに、居住・定住についてです。近年は社会増の傾向にあるものの、長年人口が減少しており、地域活力の維持と多様な年代が豊かに住み続けられる村づくりが喫緊の課題となっております。村内に増加する空き家に移住希望者が定住できるよう、空き家バンク制度を継続します。また、子育て世帯が本村に住み続けていただけるよう、子育て世帯が住宅を新築された場合に引き続き助成金を交付いたします。また、阪合地区公有地等住宅開発事業について、入居者の集落づくりに向けたサポートを行うほか、空き区画の募集を継続してまいります。さらに、光ケーブル敷設やWi-Fiスポットの整備等のICTの総合的・効率的な活用の検討も進めてまいります。
働く場の創出については、空き家を村の資源として考え、古民家のビジネス利用を目指して、放置された空き家の再生とビジネスチャンスの場の提供を行ってまいります。
次に、農業の振興についてです。農業従事者の高齢化や担い手の減少が進展するなか、農業担い手の育成・支援として農業次世代人材投資事業を活用し、新規就農者の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るとともに、地域おこし協力隊制度の活用や農業塾の開講により、就農希望者の掘り起こしを行ってまいります。さらに、これまでの国の経営体育成支援事業に加え、新たに村独自の支援策として45歳未満の農業者が行う農産物の生産・加工等に必要な機械や施設の改良・取得に係る経費につきまして助成を行ってまいります。
また、農業委員会をはじめ、地域振興公社や関係団体等と連携し、農地利用の最適化に取り組むとともに、農業の拠点施設である農業振興施設を整備するため、建設等に関わる諸条件の調整を実施してまいります。
有害獣対策については、猟友会や捕獲専門員と連携し、有害鳥獣の個体数の減少に取り組むとともに、狩猟免許の取得・更新助成を行い、人材の確保を図ってまいります。
林業の振興については、近年の木材価格の低迷により、森林の施業放置が進んでいることから、県の森林環境税等を活用し、間伐等の施業を行うとともに、間伐材の利用を促進してまいります。
商工業の振興については、商工業者が経営の合理化や近代化などを図る際に必要な資金融資に対して、債務保証料や利子補給などの支援を行ってまいります。


 第4に「魅力を磨きつづける」です。
まず、『飛鳥・藤原』の世界遺産登録について、ユネスコへの早期申請を目指した条件整備などに努めるとともに、日本遺産『日本国創生のとき~飛鳥を翔た女性たち~』を国内外に発信するなど、飛鳥を世界に発信する取り組みを強化してまいります。
また、村の文化財の価値や魅力をわかりやすく伝えるため、「見える化」「体感」を意識した文化財の保存と活用を図ってまいります。具体的には、飛鳥宮跡について、県と連携して史跡の追加指定及び公有化を促進し、整備・活用の手法を検討してまいります。
観光振興については、明日香村の価値や魅力を広く発信するとともに、誘客や交流を促進するため、光の回廊、彼岸花祭や古都飛鳥文化祭等を開催するとともに、観光プロモーション会への参加やSNS等を活用した情報発信に取り組んでまいります。併せて、観光来訪者が効率的に目的地に到達できるよう飛鳥地域で統一した案内サインを設置してまいります。また、国内外の教育旅行を中心とするホームステイ型の民泊を促進し、地域の活性化及び地域経済の発展に努めてまいります。


 第5に「村民及び各種団体等との協働事業」です。
活力ある村づくりをめざして、村民との対話などを進め、協働によるむらづくりを積極的に推進してまいります。その際、効果効率的な行政運営を継続するため、「行財政改革推進計画」を踏まえ、実効性のある組織体制づくりや健全な行財政運営に努めてまいります。
大学等との連携・協働については、大学や企業が有する人材、知識、経験等を活用し、観光、福祉、教育などの各分野での連携を深めてまいります。特に関西大学、天理大学、奈良県立医科大学、帝塚山大学等の大学との間で、より一層の効果的・継続的な取り組みを進めてまいります。
学術・文化・スポーツの分野については、本村にゆかりある村内外の美術家の作品発表や交流の機会としての「明日香の匠展」の開催、村外の若手作家と村民との協働や作品を通じた明日香の魅力発信を目的とした「飛鳥アートヴィレッジ」の充実、新たに次代を担う子どもたちによる日頃の練習の成果を発表する「子ども芸能大会」の開催、並びに各大字に伝わる伝承や風俗を後世に引き継ぐための冊子の刊行の支援等を実施してまいります。これらにより、文化振興と芸術に触れる機会の充実を行ってまいります。
また、昨年10月にNPO法人となった総合型地域スポーツクラブにつきましては、自助努力を原則としながらも一定の支援を継続するなど、村民のスポーツ環境の整備、体力向上や健康増進に資するよう、これまで以上に関係機関・団体との連携並びに組織体制強化を図ってまいります。


 以上、平成30年度の村政運営に関する基本的な考え方と新年度における施策の大綱を申し上げたところです。本方針に基づき、提案させて頂いた平成30年度予算案をはじめ、各議案につきましてご審議の程よろしくお願いいたします。

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