お問い合わせ窓口:明日香村役場
令和4年明日香村議会第1回定例会において、令和4年度の当初予算、並びに諸議案をご審議頂くにあたり、村政運営に関する基本的な考え方と新年度における施策の大綱を申し上げ、議員各位並びに村民の皆様方のご理解とご協力をお願いするものであります。
現在、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が世界各地で蔓延しており、未だ収束までは見通せていません。一方、コロナ禍で激化する米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル開発、各国でおこる人権侵害など、近年、世界の不安定要因が急激に拡大しています。また、百年単位で進む地球温暖化、気候変動の激化は、世界中で脱炭素化の取り組みを加速させていますし、急激に進むデジタル技術革新に対応して、我が国でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務となっています。
このような状況のもと、政府の進める令和4年度一般会計当初予算案の総額は107兆5,964億円で、前年度に比べ9,867億円の増額となっております。国債発行額の残高は、コロナ感染対策の影響もあり、令和4年度末で1,026兆5,000億円となる見込みで、今後の政府の施策展開によっては、自主財源に乏しい明日香村の財政運営が大きな影響を受けることも考えられることから、その動向を注視しながら機動的な村政運営に努めてまいります。
さて、昨年11月に公表された令和2年10月国勢調査結果では、本村の人口は5,179人、平成27年10月からの5年間で344人の人口減少となりました。15歳までの年少人口は過去5年間では減少しなかったものの、高齢化率は41.2%に達し、農業者をはじめとする担い手の急激な減少が目前に迫っています。若年層の働く場・住まいの確保、古民家の空き家対策、耕作放棄地への対応、公共施設の老朽化対策など、様々な課題も山積しています。一方、令和2年10月に村道地ノ窪線が全線供用開始し、令和4年2月に牽牛子塚古墳等の復元整備が完成しました。加えて、令和5年春役場新庁舎移転を目指し、建設が進んでいますし、令和6年夏を目指して「飛鳥・藤原」の世界遺産登録活動が本格化しています。村の安全安心と地域活性化に資する様々な社会基盤が整いつつあります。
令和4年度の村政運営にあたっては、新型コロナウイルス感染症対策に機動的に取り組みながら、村民の皆様の日常生活を取り戻す、"ウイズコロナ社会“づくりを推進するとともに、「第5次明日香村総合計画及び総合戦略」に掲げた将来像「いつまでも住み続けたい そう思える夢ある村」の実現に向け、関係機関と連携し、見守り支援の強化・買い物サポート・公共交通の見直しなどを進めてまいります。また、令和4年度は「飛鳥・藤原」の世界遺産登録に関する国内推薦をめざすとともに、新庁舎建設事業や星野リゾート誘致などの主要プロジェクトを進め、あわせて「明日香まるごと博物館地域計画」に基づき、文化観光推進施策を本格的に展開してまいります。加えて、国の進めるデジタル化の推進とあわせて、行政手続きのオンライン化などの行政サービスの向上にも取り組みます。
その上で、個々の地域課題に対して、優先順位をつけながら、一つ一つ村民目線に立って解決していくとともに、中長期的な視点に立ち、国・県・民間事業者等との連携を深めながら、効果効率的な財政運営を進め、将来負担の軽減にも努めてまいりたいと考えています。
それでは、令和4年度当初予算案の概要について、ご説明いたします。一般会計の予算総額は54億600万円で、前年度と比べると、総務費で新庁舎建設事業費、新型コロナウイルス感染症対策事業費などにより、7億744万円、43.0%の増、消防費で防災行政無線等移設事業などにより、6,694万円、47.7%の増となっており、一般会計全体では8億7,300万円、19.3%の増となっております。一般会計と7特別会計、水道事業会計、下水道事業会計の合計10会計を合算すると、80億6,390万円となり、前年度と比べると10億6,372万円、15.2%の増となっております。
それではまず、主要プロジェクトから説明させていただきます。
新庁舎建設については、令和3年度に着手した新庁舎建設の建設工事を引き続き行い、令和4年度中の完成を目指します。併せて新庁舎に必要な備品の取得を行い、開庁に向けた準備を行ってまいります。また、新庁舎移転後の既存公共施設の今後の利活用のあり方についての検討をおこなってまいります。
企業誘致の促進については、例えば星野リゾートや長谷工コーポレーションのように、村の歴史的風土の保全・改善・活用に共感する企業が、事業所や宿泊施設等を立地させる際に、事業者の建設計画の進捗に併せ、地区計画の策定や開発等に関わる諸条件の調整を随時行ってまいります。
次に総合計画の5つのテーマに分け、各種施策を説明させていただきます。
第1は「特色ある歴史的環境で次代を担う子どもが育つ村」です。
はじめに、子育て支援についてです。新型コロナウイルス感染症が長期化するなか、母子の健康管理や虐待防止への対応について、保育園や幼稚園、小中学校と民生児童委員協議会などの関係機関とが連携を密に図るとともに、幼稚園の余裕教室を活用した子育て交流会事業、あすかっこアプリによる情報配信の充実、子育てに係る経済的な負担の軽減などに努めてまいります。また、放課後児童クラブの実施に加えて、「ファミサポあすか」での一時預かり利用の継続に取り組み、新型コロナウイルス感染予防に努めながら、安心して子どもを預けることができる環境の整備を引き続き行ってまいります。
教育においては、幼小中一貫教育の特色を活かした教育として、小学校高学年から教科担当制授業を行い、会話につながる英語教育や、世界遺産登録も視野に入れた郷土学習の充実等を図り、小学校から中学校まで少人数学級編成によるきめ細かな学習指導を行うことで、学力向上と自立した感性豊かな子どもたちの育成を図ってまいります。また、利便性向上と多世代交流の場としての機能充実を図るため、図書室の見直しを行います。
第2に「万葉の地で元気にいきいきと暮らせる村」です。
はじめに、新型コロナウイルスのワクチン追加接種や小児の接種について、明日香村国民健康保険診療所や山下医院、奈良県立医科大学等と連携し、早期に接種が完了するよう接種体制を整備するとともに、ワクチンの情報についての周知啓発に取り組み、ウィズコロナ社会のもとで村民の生命と健康が守られるようリスク軽減に努めてまいります。
次に、健康・医療・介護についてです。奈良県立医科大学と連携し、「あすか健康プロジェクト事業」を継続実施するとともに、高齢者が定期的に集まる"ふれあいサロン"や各種健康教室で実施するフレイル予防について、専門職種の積極的な介入と訪問を行ってまいります。また、健診未受診者への受診勧奨等を強化することで、受診率の向上を図り、重症化予防に努めてまいります。
さらに、寝たきりの原因となる骨粗鬆症の検診を導入し、生活習慣病の改善、予防対策をより一層推進し、医療費の適正化を図ってまいります。
高齢者の日常的な生活支援については、生活の困りごと等の現状把握に努め、多様な相談に対応するため、多職種との連携や支援の介入をおこなう体制について、社会福祉協議会と連携し、重層的支援体制の基盤を整備してまいります。また、担い手であるボランティア活動の支援と育成に努め、買い物支援や新型コロナの影響で活動自粛している"ふれあいサロン"活動時の見守り支援の再開や充実に取り組んでまいります。
障害者福祉については、一人ひとりのニーズに応じた各種福祉サービスの提供体制の充実を図るとともに、保健・医療等の関係機関が連携し、支援体制の確保に努めてまいります。
第3に「古都にふさわしい安全・安心で生活しやすい村」です。
はじめに道路整備についてです。国道169号の交差点改良、県道多武峰・見瀬線の島庄地区、並びに主要地方道桜井明日香吉野線の石舞台地区の狭隘部のバイパス整備については、引き続き、県に働きかけを行い、早期完成を目指してまいります。また、既存の集落内の道路については、地元の要望などを踏まえ、緊急度や利用状況などを勘案しながら、自然色舗装などの周辺景観に配慮した整備を順次行い、利用者がより安全・安心・快適に通行できるよう努めてまいります。
幹線道路や橋梁については、継続的な定期点検を行い、計画的に長寿命化を図るため、改修や修繕等を行ってまいります。
水道事業については、安全で安定した給水を行うため、老朽管及び加圧ポンプの更新工事、並びに減圧弁施設等の水道施設の改修を行ってまいります。また、持続可能な広域水道経営を目指す、県域水道一体化については、引き続き前向きに協議を進めてまいります。
次に、下水道事業については、計画的かつ効果的な調査・修繕等を行うため、昨年度の排水管及びマンホールに引き続き、村内14箇所に設置しているマンホールポンプのストックマネジメント計画の策定を行ってまいります。また、県道多武峰・見瀬線島庄地区の事業計画に合わせ、上下水道新設の設計を行ってまいります。
また、村民の生命や財産を災害から守るため、被災時に下流への影響が大きい防災重点ため池について、耐震性及び施設の劣化状況を調査するとともに、県が実施する県営の急傾斜地崩壊対策事業を稲渕地区や細川地区で進めてまいります。
さらに、地域の実情に見合った防災・減災対策や新型コロナウイルス感染症に対応した防災訓練を実施してまいります。加えて、新庁舎移転に併せて、村防災行政無線、県防災無線、震度計及び雨量計の移設を行ってまいります。
ごみ処理については、引き続き、橿原市に可燃ごみの焼却処理を委託し、適正処理に努めるとともに、その他のごみについても減量化と資源化を促進してまいります。また、令和5年度までの債務負担行為を設定し、老朽化したごみ収集車の更新を図ってまいります。
し尿処理については、橿原市に委託し適正処理に努めるとともに、し尿中継施設の整備に向け、用地の取得や実施設計を行ってまいります。
公共交通については、住民や来訪者が利用しやすい公共交通、及び高齢化により増加する交通弱者の外出支援強化を目指して、赤かめ周遊バス・飛鳥キトラ線・金かめ乗合交通・コミュニティタクシーの運行見直しや交通体系の改善、及び2次交通の充実など、地域特性にあった新たな交通システム導入に向けて実証実験を進めてまいります。
居住・定住については、村内の空き家に移住希望者が定住できるよう、空き家バンク制度を継続強化いたします。また、子育て世帯が住宅を新築された際の負担を軽減するため、助成金の交付を引き続き行ってまいります。
雇用環境の創出については、安定的な雇用環境を創出するため、人材派遣を行う特定地域づくり事業協同組合の活動に対して支援を実施してまいります。
第4に「古代史の舞台で交流を促し元気のある村」です。
はじめに、農業の振興についてです。農業従事者の高齢化や担い手の減少が加速するなか、「農地を守る」という観点から、明日香村地域振興公社を主体に農作業の受託事業を拡大して、耕作放棄地の増加に歯止めをかけ、世界遺産にふさわしい農村景観を創出します。また、公社が耕作可能な農地を維持管理し、新たな担い手へと引き継げるよう努めてまいります。
次に、「農業者を育てる」の観点から、明日香村地域振興公社と連携し、就農者が地域に定着した営農が行えるよう人材育成を行ってまいります。また、既存農業者が後継者に継承するための体制づくりを進めてまいります。
さらに、「農業・農地で稼ぐ」の観点から、飛鳥米を中心とした農産物のブランディングを強化し、商品価値を高めるとともに、いちごに次ぐ新たな産地化作物の実証を行い、稼げる農業の実現を目指してまいります。
有害獣対策については、減数対策として、猟友会と連携し、捕獲を続けるとともに、防除対策として、集落診断を実施し、獣害防護柵の弱点を克服し、獣害対策効果を高めていけるよう新たな支援策の導入も含めて、農産物の被害軽減に努めてまいります。また、有害獣の"すみか"となる荒廃化した林縁部周辺において、景観・空間を活用した新たな里山ビジネスの可能性を検討してまいります。
林業の振興については、木材価格の低迷により森林の管理不足が進んでいることから、県の森林環境税等を活用し、間伐や皆伐を行い、新たに広葉樹の植樹を実施することで、防災力の強化を図るとともに、レクリエーションの場として活用できる里山の創出を進めてまいります。
商工業の振興については、チャレンジショップ事業を継続実施するとともに、民間によるクラウドファンディングの活用に対する支援を実施し、新規創業や事業継承等の民間事業に対する各種支援についても取り組んでまいります。
観光振興については、五感で体感できる「明日香まるごと博物館」の実現に向けて、「明日香村観光戦略」に基づき、一般社団法人飛鳥観光協会をはじめとした民間事業者と連携を図り、観光消費額・宿泊客数の向上をめざし、効果的・効率的に取り組みを展開してまいります。
観光受入地環境の充実については、「食」の魅力を活かした閑散期キャンペーンを村内農業者及び飲食事業者と連携を図りながら実施するとともに、世界遺産登録と連動して、多様な主体による歴史文化や農業・自然などの地域資源を活用した旅行商品・体験プログラムを造成するなど、多角的に取り組んでまいります。また、村内の文化財を活用した新たな収益事業として、古墳等遺跡をめぐる周遊事業についても新たに取り組んでまいります。
観光情報の発信については、観光ポータルサイトやSNSを活用し、来訪者に向けた観光情報を充実するとともに、コロナ禍における新たな明日香ファン創出に向けて魅力ある情報発信に努めてまいります。
また、ウィズコロナ期のインバウンド誘客については、台湾市場をメインターゲットとして、中期的視点でプロモーションや旅行商品造成の取り組みを進めてまいります。
観光交流については、飛鳥光の回廊に関し、世界遺産暫定リスト構成資産の夜間ライトアップや光の演出により、普段見ることができない特別な空間と時間を創出するイベントとして位置付け、ウィズコロナの時代に対応した実施体制で開催する予定です。加えて、村内の飲食、宿泊、駐車場等関連事業者と連携を図り、地域の収益性の向上を図るとともに、イベントを通じて村の魅力を地域一体となって発信し、世界遺産登録に向けた機運の醸成を目指します。
また、2023年3月の飛鳥ハーフマラソン大会開催に向け、第1回大会の課題や改善点等を踏まえ、第2回大会がより安心安全に開催できるよう準備をすすめてまいります。さらに、村民、村内観光事業者、商工業者とともに大会を盛り上げ、地域活性化を目指します。「走ってタネをまこう」をキャッチコピーとして、参加費の一部を歴史的風土の保全にあてるとともに、世界遺産登録推進と連動し、国内外に広く情報発信を行い、新たな明日香ファンの獲得に努めてまいります。
第5に「世界遺産登録による歴史的風土を守り活かし新たな文化をつくり出す村」です。
まず、『飛鳥・藤原』の世界遺産登録について、ユネスコへの早期申請を目指し、提出した推薦書素案について、文化庁の文化審議会の意見を踏まえて修正作業を実施するとともに、構成資産の解説板設置や気運醸成のための講演会等を実施してまいります。
また、村の文化財の価値や魅力をわかりやすく伝えるため、「見える化」「体感」を意識した文化財の保存と活用を図ってまいります。具体的には、飛鳥宮跡について、県と連携して史跡指定の追加及び公有化を促進し、整備・活用の手法を検討してまいります。あわせて飛鳥京跡苑池についても、実物展示も含めた整備の促進を働きかけてまいります。
牽牛子塚古墳等復元整備については、平成29年度から5カ年にわたり実施してまいりましたが、本年2月末に完成し、3月5日に記念式典を開催いたします。今後、牽牛子塚古墳においては、名前の由来である「アサガオ」を使ったアサガオプロジェクトを推進させ、保存と活用に努めてまいります。さらに、西明日香地域周遊の観光拠点となるよう、農業振興施設“アグリステーション飛鳥"と連動して、周辺の観光施設や地域資源とのネットワーク化を図るための準備を進めてまいります。
学術・文化の分野については、「明日香の匠展」を開催するとともに、「飛鳥アートビレッジ」の開催について検討してまいります。また、公民館活動等を展開されている各種団体やサークル、次世代を担う子どもたちによる芸能発表を実施するなど、来訪者も含めた多世代にわたる交流ができる文化が香る村づくりを展開してまいります。
協働・連携については、「明日香座」などにより、村民との協働による村づくりを推進するとともに、大学・企業とも積極的に連携を行い、新たな発想や多様な人材を活用した村づくりを行ってまいります。
以上、令和4年度の村政運営に関する基本的な考え方と、新年度における施策の大綱を申し上げました。本方針に基づき、提案させて頂いた令和4年度予算案をはじめ、各議案につきまして、ご審議の程よろしくお願いいたします。
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