お問い合わせ窓口:明日香村役場
令和5年明日香村議会第1回定例会において、令和5年度の当初予算、並びに諸議案をご審議頂くにあたり、村政運営に関する基本的な考え方と新年度における施策の大綱を申し上げ、議員各位並びに村民の皆様のご理解とご協力をお願いするものであります。
まず4年目に入った新型コロナウイルス感染や2年目に入ったロシアのウクライナ侵略等により、原油価格の高騰に始まり、原材料費の上昇、食品等の値上げ、電気やガスなどの光熱費の上昇など、物価高騰が収まらない状況にあり、世界的にも景気後退の懸念が高まり、不安定な政治・経済情勢が続いています。
一方、新型コロナウイルス感染症の国内での法的位置付けについては、5月8日から2類感染症から5類感染症へと移行する方針が示されました。このような状況のもと、国内では村民の皆様や事業所等への感染対策に関する協力要請等が終了し、今年1月からはイベントの開催制限や施設の使用制限の緩和が行われ、今月3月13日からは屋内、屋外を問わずマスク着用は個人の判断に委ねられるなどの緩和措置が実施されています。こうした中、本村においても学校でのマスクの取り扱いや高齢者等の集いの場での感染対策などについて、国や県の動向に敏感に対応しつつも、ウィズコロナ社会のもとで村民の皆様の生命と健康がしっかり守られるようリスク軽減に努めてまいります。
また、4月以降の令和5年度の新型コロナワクチン接種について、国は、追加接種が可能な全ての年齢の方を対象として、秋から冬にかけて1回接種を実施し、高齢者や重症化のリスクの高い方等については、春から夏にかけて前倒して、さらに1回接種を実施するなど、ワクチン接種の体制を検討しており、その結論に応じて必要な接種体制の確保に努めてまいります。
このような状況のもと、政府の進める令和5年度一般会計当初予算案の総額は114兆3,812億円で、前年度に比べ6兆7,848億円の増額となっております。国債発行額の残高は、コロナ感染対策の影響もあり、令和4年度末で1,145兆6,000億円となる見込みで、今後の政府の政策展開によっては、自主財源に乏しい明日香村の財政運営にも大きな影響を受けることが考えられることから、その動向を注視しながら機動的な村政運営に努めてまいります。
さて、本村では、今年1月31日現在、人口は5,267人、高齢化率は40.6%と増加し続けており、村の労働人口の急激な減少が進んでいます。また、地域を元気にするために必要な交流人口や若年定住人口の確保、空き家対策、耕作放棄地対策、公共施設のファシリティマネジメントなど、緊喫の様々な課題が山積しています。一方、令和5年5月の役場新庁舎開庁に向けての準備は順調に進んでおり、さらに、民間のスーパーや宿泊施設の整備が始まろうとしており、村の活性化も新しい段階となっています。加えて、「飛鳥・藤原」の世界遺産登録の取り組みも本格化しています。
令和5年度の村政運営にあたっては、新型コロナウイルス感染症対策に取り組みながらも、村民の皆様の日常生活を取り戻す"ウィズコロナ社会“づくりを推進するとともに、「第5次明日香村総合計画及び総合戦略」に掲げた将来像「いつまでも住み続けたい そう思える夢ある村」「五感で体感できる明日香まるごと博物館」をしっかり見据え、取り組みを着実に進めてまいります。
その中で、個々の地域課題に対して、優先順位をつけながらも、一つ一つ村民目線に立って解決していくとともに、中長期的な視点に立ち、国・県・民間事業者等との連携を深めながら、効果効率的な財政運営を進め、将来負担の軽減にも努めてまいりたいと考えています。
それでは、令和5年度当初予算案の概要について、ご説明いたします。一般会計の予算総額は43億6,900万円で、前年度と比べると、総務費で新庁舎建設事業に伴う工事の完了などにより、11億1,823万円、50.3%の減、教育費で図書室整備事業の実施などにより、3,989万円、6.2%の増となっており、一般会計全体では10億3,700万円、19.2%の減となっております。一般会計と7特別会計、水道事業会計、下水道事業会計の合計10会計を合算すると、70億2,383万円となり、前年度と比べると10億4,007万円、12.9%の減となっております。
それでは、総合計画の5つのテーマに従い、各種施策を説明させていただきます。
第1は「特色ある歴史的環境で次代を担う子どもが育つ村」です。
はじめに、子育て支援についてです。子育て世代包括支援センターを中心に母子の健康管理や虐待防止への対応について、引き続き関係団体と連携を図ってまいります。また、幼稚園の余裕教室を活用した子育て交流事業において、開放日の増加や幼稚園行事の預かり等を強化するととともに、子育てに関する学びの場の充実を図ってまいります。さらに、「あすかっこアプリ」を活用した情報配信の充実や「ファミサポ明日香」での一時預かり事業の実施に加えて、新たに出産や子育てに必要な経済的支援を一体的に取り組む「出産・子育て応援ギフト」を追加し、安心して出産・子育てができる環境の整備を強化してまいります。一方、妊娠や出産を希望しているにも関わらず子どもが授からない方への不妊治療について、相談支援とともに、その検査に係る費用の一部を助成し、経済的な支援を引き続き実施してまいります。
教育においては、自ら考え、取り組み、学びを深める子どもの育成を目指し、子ども達の社会適応力の向上や一人ひとりにきめ細かく指導できる体制を整えるとともに、より魅力ある幼児教育や子育て支援環境整備について、検討・準備を進めてまいります。また、村民の皆様のスポーツや文化における交流機能の充実並びに情報発信の強化のため、指定管理者制度を活用して、公民館の効果効率的な管理運営と村民サービスの向上をめざします。さらに、中央公民館分館の図書室を健康福祉センター内に設け、図書室利用者の利便性向上と健康福祉センターにおける子育て支援や多世代交流にかかる機能の充実を図ります。
第2に「万葉の地で元気にいきいきと暮らせる村」です。
はじめに、健康・医療についてです。奈良県立医科大学と連携し、特定健診に特化した「あすか健康プロジェクト事業」と「健康ステーション事業」を積極的に連動させ、壮年期から高齢期へと連続性のある健康づくりを展開するとともに、健診未受診者への受診勧奨等を強化し、より一層予防対策を推進してまいります。また、中学生まで助成している子ども医療費助成について、対象年齢を18歳まで拡充し、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ってまいります。
次に、介護予防支援については、地域包括支援センターを中心に社会福祉協議会や関係団体と連携し、「ふれあいサロン」などに、リハビリに関わる専門職種の継続的な介入を行いながら、フレイル予防と社会参加の促進を図ってまいります。また、複雑化した相談に対応するために多機関協働による支援体制の構築に向けて協議を重ね、既存のサービスを組合わせながら、地域包括ケア体制の構築を図ってまいります。さらに、交通弱者への支援については、付き添い型の買い物支援の実施や移動販売車の導入の検討をおこなってまいります。
障害者福祉については、障害のある人の意思を尊重し、当事者や家族、支援団体のニーズ調査を基に各種福祉サービスの提供体制等を見直し、保健・医療などの関係機関と連携した、支援体制の確保に努めてまいります。
今後、2025年に団塊の世代全員が後期高齢者を迎えるにあたり、人生の最後の暮らし方までも見据えた在宅医療と介護等のあり様について分析し、日常生活や社会活動の継続を支援するための拠点のあり方についても検討をおこないます。
第3に「古都にふさわしい安全・安心で生活しやすい村」です。
はじめに新庁舎については、4月末に内覧いただき、5月の連休明けに新庁舎へ移転し開庁するため、現在分散している各課からの業務の移転を進めるとともに、残った不要什器等の処分を行います。その後移転を踏まえて、現庁舎周辺の土地利用の動向とあわせて、現庁舎の一部解体等の設計業務、及び図書室移転後に備えて中央公民館分館のあり方検討及び改修設計業務をおこなってまいります。
また、国の進めるデジタル化の推進に向けて、住民アンケートや職員研修の実施、自治体情報システムの標準化に向けた準備業務の実施、並びに、行政手続きのオンライン化などの村民サービスの向上に取り組むとともに、村民のデジタル化支援にも努めます。
地域防犯の推進については、地域の防犯力の向上を図るため、防犯カメラ及び防犯灯LED化に対する補助、防犯灯の修繕、及び電話による特殊詐欺を防ぐため、新たに防犯電話設置への補助を行います。
定住促進については、子育て世帯が住宅を新築された際の負担を軽減するための助成金交付の継続や、空き家を有効活用するための空き家バンク制度の強化、阪合地区の市街化区域内遊休地の活用を目指す住宅地形成検討などを進めることにより、若年層、子育て世帯の定住人口の確保を図っていきます。
公共交通については、デマンド型乗合タクシーの運行、高齢者など交通弱者が利用しやすい優待料金の設定、社会福祉協議会と連携した買い物支援運行など、誰もが身近に利用できる公共交通を目指して取組を進めてまいります。
ごみ処理については、引き続き、橿原市に可燃ごみの焼却処理を委託し、適正処理に努めるとともに、その他のごみの減量化、資源化も促進してまいります。また、老朽化したごみ収集車の更新も行います。
し尿処理についても、橿原市に委託し適正処理に努めるとともに、真弓において、し尿中継施設整備工事を行ってまいります。
次に、下水道事業については、計画的かつ効果的な調査・修繕等を行うため、昨年度までに管路及びマンホール、マンホールポンプ施設のストックマネジメント計画の策定を行いました。今年度については、マンホール蓋の調査及びマンホールポンプ施設の修繕・改築計画を策定してまいります。
水道事業については、安全で安定した給水を行うため、老朽管の更新及び減圧弁施設等の改修を行ってまいります。また、持続可能な広域水道経営を目指す、県域水道一体化については、令和5年度から法定協議会に移行し、引き続き前向きに協議を進めてまいります。
また、村民の生命や財産を災害から守るため、被災時に下流への影響が大きい防災重点ため池について、耐震性及び施設の劣化状況を調査するとともに、県が実施する県営の急傾斜地崩壊対策事業を稲渕地区や細川地区で進めてまいります。
さらに道路整備についてです。国道169号の交差点改良、県道多武峰・見瀬線の島庄地区、並びに主要地方道桜井明日香吉野線の石舞台地区の狭隘部のバイパス整備については、引き続き、県に働きかけを行い、早期完成を目指してまいります。また、既存の集落内の道路については、地元の要望などを踏まえ、緊急度や利用状況などを勘案しながら、自然色舗装などの周辺景観に配慮した整備を順次行い、利用者がより安全・安心・快適に通行できるよう努めてまいります。幹線道路や橋梁については、継続的な定期点検を行い、長寿命化を図るため、計画的に改修や修繕等を行ってまいります。
第4に「古代史の舞台で交流を促し元気のある村」です。
はじめに、農業の振興についてです。「農地を守る」という観点から、地域振興公社が主体となり、耕作放棄地の解消や農作業受託による農家サポートを行い、耕作放棄地の増加に歯止めをかけ、世界遺産にふさわしい農村景観の維持に努めてまいります。また、農地の新たな管理活用方法を検討するとともに、新たな担い手として企業等の参画を促進して、担い手不足の解消に進めてまいります。
次に、「農業者を育てる」の観点からは、人・農地プランの策定を通じて大字との協議検討を重ねていき、集落ごとの将来ビジョンを検討するとともに、農業経営の継承や新規就農者に対する支援を行ってまいります。
さらに、「農業・農地で稼ぐ」の観点から、お米を中心とした農産物のブランディング等を強化することで、農産物の商品価値を高めるとともに、新規作物や加工品開発を行って、稼ぐことができる農業を目指してまいります。
被害範囲が拡大傾向にある有害獣対策については、猟友会と連携し、減数対策としての捕獲を続けるとともに、捕獲檻の増強や地域おこし協力隊による駆除の強化も図ってまいります。また、集落診断事業により大字や農家の防御力向上を図るとともに、有害獣の"すみか"となる荒廃化した林縁部や荒廃農地において、企業等との連携による空間活用型の新たな里山ビジネス等を目指してまいります。
商工業の振興については、民間によるクラウドファンディングの活用に対する支援を実施し、新規創業や事業継承等の民間事業への支援についても取り組んでまいります。
観光振興については、飛鳥周辺の賑わいの場を創出するため、観光ガイドの活用や万葉文化館との連携による来訪者ルートとしてのプログラムづくりや、来訪者の利便性向上による文化観光の推進と、オーバーツーリズム対策にも活用できる共通券システムの構築など、五感で体感できる「明日香まるごと博物館」の実現に向けて、飛鳥観光協会をはじめとした民間事業者と連携し、観光消費額・宿泊客数の向上をめざし、効果効率的に取り組みを展開してまいります。
観光受入地環境の充実については、村内農業者及び飲食事業者と連携を図りながら「食」の魅力を活かした閑散期キャンペーンを実施するとともに、世界遺産登録の動向と連動し、質の高いプロガイド養成、「御朱印」企画の継続などを行うとともに、多様な主体による歴史文化や農業・自然などの地域資源を活用した旅行商品・体験プログラムの造成など、多角的に取り組んでまいります。
また、インバウンド誘客については、令和5年度は台湾市場をメインターゲットとして、これまでのプロモーション成果を活かした旅行商品の造成を進めてまいります。
観光交流については、観光シーズンの格差を解消し平準化を図るとともに、滞在時間の延伸等を目指してまいります。特に、宿泊業・飲食業などの振興に資するイベント開催を目指してまいります。
企業誘致の促進については、例えば星野リゾートや長谷工コーポレーションのように、村の歴史的風土の保全・改善・活用に共感する企業が、事業所や宿泊施設等を立地させる際に、事業者の建設計画の進捗に併せ、開発等に関わる諸条件の調整を随時行ってまいります。
また、第3回飛鳥ハーフマラソンを開催し、飛鳥の歴史資産、豊かな自然や食を多くの方々に堪能していただくことで、関係人口の獲得、地域経済の活性化、村民の健康意識の向上をめざすとともに、世界遺産登録推進と連動し、国内外に広く情報発信を行い、新たな明日香ファンの獲得に努めてまいります。
第5に「世界遺産登録による歴史的風土を守り活かし新たな文化をつくり出す村」です。
まず、『飛鳥・藤原』の世界遺産登録について、国内推薦を得るため、文化庁の文化審議会の意見を踏まえて推薦書素案の修正や国際的理解の向上を目指すとともに、『飛鳥・藤原』の世界遺産学習の機会創出や機運醸成のための講演会等を実施してまいります。また、世界遺産登録に向けて、インタープリテーションを行う世界遺産センター等の拠点機能や、構成資産の周遊に適したルート設定、並びに、新たな視点場の検討を行うとともに、村の文化財の価値や魅力をわかりやすく伝えるため、「見える化」「体感」を意識した文化財の保存と活用を図ってまいります。具体的には、同志社大学と連携して構成資産を身近に体感できるVRコンテンツの制作や、飛鳥宮跡及び飛鳥京跡苑池について、県と連携して、整備・活用の手法を検討してまいります。さらに大官大寺跡周辺の活用に向けたあり方検討や中尾山古墳の保存・活用に向けた基本計画・基本設計を進めてまいります。
整備を行った牽牛子塚古墳周辺では、史跡地の西側県有地を活用し、園路等の整備による来訪者の利便性を高めてまいります。また、名前の由来である「アサガオ」を使ったアサガオプロジェクトを推進させ、保存と活用に努めてまいります。さらに、西明日香地域周遊の観光拠点となるよう、農業振興施設“アグリステーション飛鳥"と連動して、周辺の観光施設や地域資源とのネットワーク化を図るための準備を進めてまいります。
学術・文化の分野については、本年10周年を迎える「明日香の匠展」を開催するとともに、「飛鳥アートビレッジ」や伎楽再現について実施を検討してまいります。また、公民館活動等を展開している各種団体やサークルとともに、次世代を担う子どもたちによる芸能発表を実施するなど、来訪者も含めて多世代にわたる交流ができる“文化が香る村づくり"を展開してまいります。
協働・連携については、引き続き「明日香座」などにより、村民との協働による村づくりを推進するとともに、大学・企業とも積極的に連携を行い、新たな発想や多様な人材を活用した村づくりを行ってまいります。
以上、令和5年度の村政運営に関する基本的な考え方と、新年度における施策の大綱を申し上げました。本方針に基づき、提案させて頂いた令和5年度予算案をはじめ、各議案につきまして、ご審議の程よろしくお願いいたします。
〒634-0142 奈良県高市郡明日香村大字橘21番地 (Google Maps)
開庁時間
月曜日~金曜日 8:30~17:15
※土・日・祝及び12月29日から1月3日は除く
画像及び文章等の無断転載、使用はご遠慮ください。